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ジャニーズ新参者の覚書

「泣くロミオと怒るジュリエット」を見てきた

タイトル通り、桐山照史くん柄本時生さん主演の「泣くロミオと怒るジュリエット」を見てきたので、ざっくり感想。

タイトルに騙されるけど、主人公2人より周りの個性が強烈だった。
個人的にロミオが追われる原因を間接的に作り、さらにロミオに毒薬を渡すベンヴォーリオが気になったので、深堀。

彼は悪友マキューシオを殺したロミオを恨み、殺そうと思って、ジュリエットが死んだことを告げロミオに「これで楽になれ」と自殺用の毒薬を渡す。
(決闘をやめさせようとマキューシオを羽交い締めしていたらティボルトに刺されたので、正確には殺していないけど)
ロミオが毒薬を受け取り走り去ると、俺が殺そうとしていたことを知っていたのかもしれないなと悲痛の表情をして、俺はお前らの分まで生きてやると叫ぶ。
それ以降彼は舞台に登場しなくて、カーテンコールでは衣装を黒の上下に黒のマフラーをして登場する。白衣装を着る死者の中で彼の姿は死神に見えた。
そもそも作中では明示されなかったけど、ベンヴォーリオはマキューシオに友情だけではない感情を抱いているのではと思った。マキューシオに好きな女はいるのか?と話を振られ、好きだけど見ているだけで幸せと答えるシーン。ストーリー上、この会話は意味がない。というか、話の効果を狙うならこれから死ぬマキューシオに好きな女がいるとしたほうが、悲劇性が増す。けれども、あえてベンヴォーリオに好きな人がいると言わせたのは、理由があってのことではないか。
マキューシオは決闘で死ぬ。親友のロミオが女との将来を優先させたせいで。そして、そのロミオは人を殺し、友人を間接的に殺したにも関わらず、ジュリエットを抱く。
だからこそ、殺意を抱くほどにロミオを許せなかった。自分は最愛の人を失ったのに、血まみれのおまえは最愛の人を得るのかと。
ベンヴォーリオは2人の友人を失って、失意の日々を送るだろう。知り合いもいない、戦後まもない混乱した街を渡り歩く。そして、聡明な彼はいつか自分の罪に気がつくはず。ロミオを決闘場に連れて行ったのは自分だと。悲劇を生み出した根本的な原因を作ったのは自分だと。
そのとき、彼はどう思うのか。
カーテンコールで気になったのが、マフラーだった。心理的な彼の寒々しさを表しているように思えた。


正直、私は今回の舞台は好きではなかった。
ジュリエットにブスと言葉を投げつける登場人物の無神経さとそれを笑いにしようとする姿勢にはうんざりする。
そして、ラストの流れも。せっかく悲劇悲劇で積み上げてきたのに、なぜ笑いに持っていくのか。ロミオとジュリエットが死んじゃったーって泣いているのに、なぜそこで笑いを入れる。私は笑えなかった。
でも、弟のように可愛がっていた三国人を殺した罪に苛まれ、逆に三国人グループであるモンタギューを憎み、マキューシオの遺体を抱き、最後は自殺するかのようにナイフを持つロミオの手を掴むティボルトの設定はすごく良かった。
原作だとただの色ボケ野郎のロミオが、自分たちの明日もわからないと抱えている不安を、初対面のジュリエットが吹き飛ばすのも、お互いが惹かれる理由になってて、説得力あった。
いくらでもいいシーンは思い出せる。思い出せるのに、ラストのシーンがただただ残念。
前もBunkamura堤真一主演「マクベス」を拝見して、常盤貴子の妖艶さと堤真一の疑心暗鬼さが良かったのだけど、ラストにマクベスが大玉転がしされる自分の生首を見るシーンがあって意味がわからなかった。そんな変なアレンジはいらないのに。
今回も2人が死んだところで終わりにしてほしかったなあ。

あと気になったところ箇条書き。
・2人が夜を過ごしたとき、「あれはひばり?」「あれはナイチンゲール。まだ夜よ」って原作はジュリエットがロミオを引き止めるために朝を知らせるひばりではなく、夜に鳴くナイチンゲールと偽るのだけど、今回は逆でよかった。ジュリエットはちゃんとグズグズしないで送り出せる、いい女。
・いい女といえば、時生さんのジュリエットかわいかった。最後白のドレス姿でヒールで歩いたら足元取られている場面があって、かわいい。
・マキューシオ、身体能力高すぎて、アクロバットしすぎ。すごい。
・ダンスをすると、イケイケなのがバレてしまうロミオ。桐山くんのダンス好き。ステップ踏む足が軽やかでかっこよかった。ダンスホール中の女が抱かれていた。
・ソフィアの八嶋さん、芝居がうますぎて舞台荒らし(ガラスの仮面)かよと思った。全てをさらっていく。

文句をつらつら書き連ねたけど、3時間超えの長丁場を感じさせないくらい面白かった。
実直でちょっと不器用なロミオと、気が強くて根はいい子のジュリエットの初々しさがよかった。